犬の椎間板ヘルニア|原因や症状、治療法について獣医師が解説
厚木市、海老名市の皆様こんにちは。
厚木市本厚木のはやし犬猫病院です。
今回は犬の椎間板ヘルニアについて、解説いたします。
◆椎間板ヘルニアには2つの種類がある
椎間板ヘルニアは犬でよくみられる疾患であり、脊髄を衝撃から守るための椎間板に異常おき四肢の麻痺などの大きな症状を引き起こします。椎間板は背骨と背骨にはさまれるように位置している柔らかく弾力性に富んだ組織であり、外側を覆う繊維輪と内側にある髄核の2つの部分で構成されています。繊維輪にはコラーゲン、髄核にはプロテオグリカンなどの成分が多く含まれています。椎間板ヘルニアはハンセンⅠ型とハンセンⅡ型の2つの種類があり、ハンセンⅠ型は髄核に異常がみられることで引き起こされ、ハンセンⅡ型は繊維輪に異常がみられることで引き起こされます。
◆椎間板ヘルニアになりやすい犬
ハンセンⅠ型の椎間板ヘルニアは軟骨異栄養性犬種とよばれるビーグルやダックスフントのような犬で多くみられます。この種類の病気は1歳以下の若齢の犬がかかりやすいとされています。一方、ハンセンⅡ型の椎間板ヘルニアは5歳以上の中高齢の犬で多くみられるといわれています。
◆犬の椎間板ヘルニアの症状
犬の椎間板ヘルニアは背骨にある椎間板が傷つく病気ですが、損傷した椎間板の位置によって症状が異なります。椎間板ヘルニアのうち8-9割では腰の椎間板が傷つき、残りは頸の椎間板が傷つくといわれてます。また、ハンセンⅠ型の椎間板ヘルニアとハンセンⅡ型の椎間板ヘルニアでは症状の進む速度に違いがあります。ハンセンⅠ型の椎間板ヘルニアでは髄核が繊維輪を突き破り勢いよく飛び出すことで脊髄を傷つけるため症状が急にあらわれる特徴があり、数時間から1日といった短い期間で犬に異変がみられます。ハンセンⅡ型の椎間板ヘルニアでは繊維輪がゆっくりと厚く変化することで脊髄を圧迫し傷つけるため、長い期間をかけ症状がみられる特徴があります。
犬で多い腰の椎間板ヘルニアでは下半身の麻痺に関係する症状が多くみられます。後肢が麻痺することでおきる歩き方の異常や、立ち上がれない、歩けないなどの症状、後肢に力が入らないなどの症状、また腰を触ると痛がる、嫌がるなどの椎間板の損傷に関係する痛みや、おしっこを漏らしてしまう、トイレを失敗してしまう失禁などの症状がみられることもあります。
頸の椎間板ヘルニアでは全身の麻痺に関係する歩行や運動の異常もみられますが、頸の痛み、頸を触られることを嫌がるなどの症状が多くみられるとされています。また、肺を動かすための筋肉が麻痺してしまうことによる呼吸の異常などの大きな症状もみられる場合があります。
椎間板ヘルニアでは進行性脊髄軟化症とよばれる脊髄に血液がいきわたらなくなってしまう病気が続いてみられる場合があります。一度、進行性脊髄軟化症になってしまうと治療することはできず、発症から10日前後で脊髄の壊死によって犬は死んでしまいます。
◆犬の椎間板ヘルニアの原因
犬の椎間板ヘルニアのうちハンセンⅠ型の椎間板ヘルニアでは軟骨異栄養犬種で病気がよくみられますが、これらの犬種では遺伝子の異常が椎間板の病的な変化に関係しているといわれています。椎間板ヘルニアの原因は遺伝的なものだけではなく、ソファーからの落下や、交通事故などの強い衝撃によっても病気が引き起こされることがあります。
◆犬の椎間板ヘルニアの診断と治療
・椎間板ヘルニアの診断方法
動物病院では椎間板ヘルニアを診断するために身体検査や血液検査などの一般的な検査の他に、皮膚の触覚や痛みなどの病気によって影響をうける感覚の変化を調べる神経学検査や、CTやMRIなどを使用した背骨や椎間板などの異常を見つけ出す画像検査などを行います。
・椎間板ヘルニアの治療
〇保存療法
椎間板ヘルニアがあまりひどくない場合には、ステロイド剤などの炎症を抑える薬の投薬や、ゲージレストなどが含まれる保存療法をおこなうことがあります。ゲージレストはヘルニアによって壊れてしまった椎間板の修復、傷ついた神経の治癒を目的におこなう運動制限であり、犬が動き回れないサイズのゲージなどで安静を保ち飼育する治療法です。
ゲージレストでは数カ月もの長い期間、犬を不自由な環境で飼育する必要があります。かわいそうだからといって運動をさせてしまうと、椎間板ヘルニアの悪化により四肢の麻痺などのとても重い症状を引き起こしてしまう可能性があります。獣医師の指示通りに治療をおこなうことが非常に重要です。
〇外科的手術と術後のリハビリテーション
症状の重い椎間板ヘルニアでは脊髄を圧迫している椎間板を取り除く外科的な手術をおこなう必要があります。術後にはゲージレストなどの運動制限や、麻痺した肢のマッサージや理学的な治療をおこなうことがあります。