【獣医師が解説】猫の肥大型心筋症(HCM)とは?原因・症状・治療法|厚木市のはやし犬猫病院
厚木市、海老名市、伊勢原市の皆様こんにちは。
厚木市本厚木の動物病院、はやし犬猫病院です。
猫の心臓病の中で最も多いのが、
肥大型心筋症(HCM:Hypertrophic Cardiomyopathy) です。
一見元気そうに見えても、病気がかなり進行するまで症状が出にくく、
突然の呼吸困難や動けなくなる血栓症につながることもある重大な病気 です。
今回は、猫の肥大型心筋症について、原因・症状・検査・治療法・予防まで、獣医師がわかりやすく解説します。
肥大型心筋症(HCM)とは?
肥大型心筋症とは、
心臓の筋肉(心筋)が異常に厚くなることで、心臓のポンプ機能が低下する病気
です。
厚くなった心筋によって、
- ・血液を十分に送り出せない
- ・心臓が拡張できず血液が溜まらない
- ・血液の流れが乱れて血栓ができる
などの問題が起こり、重症化すると命に関わります。
肥大型心筋症が多い猫種
遺伝が関係するとされており、以下の猫種で特に多く見られます。
- ・メインクーン
- ・ラグドール
- ・ノルウェージャンフォレストキャット
- ・スコティッシュフォールド
- ・ブリティッシュショートヘア
もちろん、雑種の猫でも発症します。
猫の肥大型心筋症で見られる症状
軽度のうちは“無症状”のことが多いですが、進行すると次の症状が現れます。
- ・呼吸が早い・苦しそう
- ・寝てばかりいる
- ・食欲が落ちる
- ・動きたがらない
- ・咳(猫ではまれ)
- ・舌や歯ぐきが紫色(チアノーゼ)
そして、最も注意すべき緊急症状が 血栓塞栓症 です。
【緊急】血栓とは?
HCMの猫に特に多い合併症で、
✔ 後ろ脚が突然動かなくなる
✔ 激しい痛みで鳴き叫ぶ
✔ 後足の肉球が冷たい
✔ 呼吸が荒くなる
などが急に起こります。
これは心臓内でできた血栓が太い血管を詰まらせる病気で、最も危険な状態のひとつ です。
すぐに動物病院に連れて行く必要があります。
肥大型心筋症の原因
猫の肥大型心筋症の多くは 遺伝的要因 が指摘されています。
その他にも以下が関係するとされています。
- ・遺伝子異常(特にメインクーン・ラグドール)
- ・高血圧
- ・甲状腺機能亢進症
- ・脱水
- ・ストレス
ただし“原因不明”の場合も多く、早期発見が何より重要 です。
動物病院に行くべき目安
次の症状がある場合は心臓病の可能性があります。
- ✅呼吸が速い(1分間に40回以上)
- ✅お腹で呼吸している
- ✅元気・食欲が落ちている
- ✅舌の色が悪い
- ✅運動後に疲れやすい
- ✅うずくまって動かない
- ✅突然後ろ脚が動かない(緊急)
呼吸に異常がある場合は、すぐに受診する必要があります。
肥大型心筋症の検査方法
はやし犬猫病院では、以下の検査を組み合わせて診断します。
・心臓エコー検査(最重要)
心筋の厚さ・血流の状態・心臓の動きを確認します。
・胸部レントゲン
心臓の形や肺の状態を確認。
・血液検査
甲状腺や腎臓の病気のチェック。
・NT-proBNP
心臓負担のマーカーで、早期発見に役立ちます。
猫の心臓病はエコー検査が必須のため、定期的なチェックが非常に重要です。
肥大型心筋症の治療法
残念ながら HCMそのものを完全に治す治療はありません。
しかし、適切な治療により、
- 進行を遅らせる
- 症状を軽減する
- 血栓のリスクを下げる
ことが可能です。
治療は以下の組み合わせになります。
<心臓の負担を減らす薬>
- ・β遮断薬
- ・カルシウム拮抗薬
- ・血栓予防の薬
- ・抗血小板薬
- ・抗凝固薬
HCMでは血栓リスクが高いため、予防が治療の中心 になります。
<利尿薬>
肺水腫(肺に水が溜まる緊急症状)が出た場合に使用します。
<併発疾患の治療>
- 甲状腺機能亢進症
- 高血圧
なども治療の対象となります。
はやし犬猫病院での心臓病治療
当院では、猫ちゃんの負担を最小限にしながら、
- ・心臓エコーによる詳細評価
- ・NT-proBNP検査
- ・呼吸状態のチェック
- ・血栓予防薬の処方
- ・心臓に優しい生活指導
- ・定期フォロー(3〜6ヶ月ごと)
を行い、一頭一頭に合わせた治療計画をご提案します。
ご自宅でのケア
HCMと診断された猫ちゃんには、次のようなケアが大切です。
- ・激しい運動を避ける
- ・ストレスを減らす
- ・体調変化を毎日チェック
- ・呼吸数を計測(1分間の数を記録)
- ・暑さ・寒さの急変に注意
- ・飲水量の管理
- ・通院・薬の継続
特に呼吸数は重要な指標で、
安静時に1分間で40回以上なら受診の目安 です。
予防・早期発見のためにできること
- ・1年に1~2回の健康診断(特に6歳以上)
- ・心雑音が指摘されたら早めの心臓エコー
- ・好発猫種では若齢のうちから検査
- ・ストレスや興奮を避ける生活環境づくり
心臓病は「早く見つけるほど、猫ちゃんの負担が少ない」病気です。
よくある質問
- 肥大型心筋症は治りますか?
A. 完治は難しいですが、治療で進行を遅らせることは可能です。 - 薬は一生必要ですか?
A. 多くの場合、継続的な投薬が必要です。 - 呼吸が早いときはどうすればいい?
A. 緊急の可能性があるため、すぐに動物病院へ。 - 血栓症になった場合、助かりますか?
A. 状況によりますが、早期治療が成功の鍵です。
まとめ
猫の肥大型心筋症は、
無症状で進行し、突然重症化することがある心臓病 です。
早期発見と適切な治療によって、
発症後も長く穏やかに生活できるケースもたくさんあります。
「呼吸が早い」「元気がない」「心雑音を指摘された」
そんな時は、早めにご相談ください。
厚木市・海老名市・伊勢原市で、猫の心臓病や呼吸の異常が気になる方は、
お気軽にはやし犬猫病院までご相談ください。
厚木市本厚木のはやし犬猫病院では、肥大型心筋症(HCM)や血栓症など、猫の心臓病診療に対応しています。


