犬の糖尿病|インスリンによる治療や症状、原因について解説
厚木市、海老名市の皆様こんにちは。
厚木市本厚木のはやし犬猫病院です。
今回は犬の糖尿病について、解説いたします。
◆犬の糖尿病は人の1型糖尿病と似ている
糖尿病は犬で多くみられる代謝性疾患であり、1-2%の動物が病気を持っているといわれています。糖尿病では食事から吸収された糖分の濃度を調節するホルモンであるインスリンが正しく働かないことで、血液中の糖分濃度である血糖値に異常がみられます。血糖値の異常は肥満や削痩などの体重の異常だけではなく、感染症や白内障などのさまざまな症状を引き起こします。
犬の糖尿病には人でいう1型糖尿病と2型糖尿病によく似た2つの種類が知られています。犬の1型糖尿病はインスリンを分泌する膵臓とよばれる臓器に異常がみられ、インスリン量が低下、もしくはなくなってしまう病気であり、2型糖尿病は身体の細胞がインスリンを受け取る能力が低くなることでインスリンが効かなくなる病気です。犬では1型糖尿病が多くみられるといわれています。
また、犬の糖尿病ではクッシング症候群や甲状腺機能低下症などの他の代謝性疾患や、膵臓に炎症がみられる膵炎などの疾患が同時にみられることがあります。
・糖尿病になりやすい犬
糖尿病は7-9歳の中高齢の犬でよくみられる病気ですが、ゴールデンレトリバーやキースホンド、ジャーマンシェパード、グレイハウンドなどの犬種は2-4カ月ほどの若齢で病気にかかりやすいといわれています。ゴールデンレトリバー、キースホンドでは膵臓のインスリンを分泌する部分である膵島の形成不全によってこれらの1型糖尿病が発症するとされています。
糖尿病はメスの犬で多くみられる病気であり、妊娠に伴う乳腺の成長に関係するホルモンの分泌や、胎児を育てるための血糖値の上昇などが発症に関係しています。
◆犬の糖尿病の症状
糖尿病では水をよく飲み、おしっこをよくする多飲多尿とよばれる症状が多くみられます。糖尿病による高血糖では尿中に多くの糖分を排出するために多尿がみられ、尿と共に失われた水分を補うために多飲がみられます。尿中に糖分が多く含まれる糖尿では、泌尿器の細菌感染がおこりやすいために膀胱炎などの感染症も同時に引き起こされることがあります。
食欲の異常な増加や肥満、体重増加もよくみられる症状です。高血糖状態では脳にある満腹中枢が正常に働くことができず食欲が増加するといわれています。糖尿病で少なくなるインスリンは血液中の糖分を全身の細胞にいきわたらせる役割があるホルモンのため、糖尿病の犬では血糖値の増加と同時に細胞の糖分不足がおき、体重の減少や削痩などの症状がみられる場合もあります。
嘔吐や下痢、便秘などの消化器症状、皮膚炎、外耳炎などの感染症、白内障や網膜症による視力の低下や失明などの症状も糖尿病ではみられることがあります。
・糖尿病性ケトアシドーシス
犬の糖尿病ではケトアシドーシスとよばれる意識レベルの低下や昏睡を引き起こす状態がみられる場合があります。ケトアシドーシスは高血糖が原因となる体内の栄養バランスの異常であり、犬の命に関わります。糖尿病性ケトアシドーシスがみられるときには、いち早くに動物病院を受診し治療を受けるようにしてください。
・犬の糖尿病の原因
犬の糖尿病には1型糖尿病と2型糖尿病の2つの種類があります。1型糖尿病はインスリン分泌が低下、なくなる病気であり、自己免疫性、特発性の原因によって引き起こされます。自己免疫性の糖尿病では病源体から身体を守るためのしくみである免疫機能に異常がみられることで、身体の一部である膵臓を攻撃してしまい病気がみられます。特発性の糖尿病は原因がわからない病気を指します。
2型糖尿病は全身の細胞がインスリンを受け取る能力が低下してしまう病気であり、遺伝子の異常や食事環境などのいくつもの原因が重なることで発症します。
◆犬の糖尿病の診断と治療
・糖尿病の診断方法
犬の糖尿病と診断するために動物病院では血糖値や血液中の脂肪量を測るための生化学的な検査や、尿中の糖分を測る尿検査、正しい治療をおこなうために糖尿病の種類を判別するグルコース負荷試験などをおこないます。
・糖尿病の治療
糖尿病の犬がケトアシドーシスによる発作をおこしている場合には緊急の治療をおこなう必要があります。輸液による血液の成分の調整や脱水に対する治療、インスリンの投与による高血糖状態の治療などをおこないます。
身体の状態がある程度落ち着いた犬では血糖値を正常に維持し、感染症や白内障などの合併症を抑えることを目的として治療をおこなっていきます。家庭でのインスリンの継続的な投与、食事療法や服薬による血糖値のコントロールなどをおこないます。