犬の膿皮症|シャンプーや抗生物質による治療と症状、原因について
厚木市、海老名市の皆様こんにちは。
厚木市本厚木のはやし犬猫病院です。
今回は犬の膿皮症について、解説いたします。
◆表在性と深在性の2つの膿皮症
膿皮症は犬でよくみられる皮膚の感染症であり、ブドウ球菌などの細菌が増殖することで炎症を引き起こします。皮膚は表皮とよばれる皮膚の細胞が層状に重なっており、毛穴である毛包などの組織を包んでいる表面の部分と、真皮とよばれる毛細血管や脂肪細胞、汗や皮脂の腺が含まれているより深い部分の2つから成り立っています。
表皮に細菌が感染したものを表在性膿皮膚症とよび、真皮に感染がおきたものを深在性膿皮症とよびますが、犬では表在性膿皮症のうち毛包に感染がおきる表在性細菌性毛包炎がもっとも多くみられます。深在性膿皮症が自然に起きることは少なく、内分泌疾患などの大きな病気に続いてみられます。
犬の膿皮症
・膿皮症にかかりやすい犬
表在性膿皮症は皮膚や免疫機能が弱い幼犬や若い犬で多くみられる病気です。アレルギー症状を持つ犬や、皮膚が脂っぽい脂漏症の犬では膿皮症にかかりやすいとされています。
深在性膿皮症はクッシング症候群などの内分泌疾患や、ステロイドを含む医薬品の不適切な使用による免疫機能の低下、重度の表在性皮膚炎や毛包虫症などの疾患を持つ犬がかかりやすいといわれています。
◆犬の膿皮症の症状
表在性膿皮症はお腹や腋、股などの毛の生えていない部分に多くみられ、痛みや痒みのない小さなできものや、膿のたまったできもの、毛穴の位置にできるぶつぶつなどの症状を引き起こします。皮膚が赤くなる、黒っぽく色素が沈着するなどの変化がみられることもあります。皮膚症状に痒みがある場合には、犬が掻き崩してしまうことでできものが分かりにくくなり、被毛に黄色いふけとして膿が付着してみえる場合もあります。
深在性膿皮症では皮下の出血や炎症が皮膚の色の変化としてあらわれ、暗い赤色や紫色の痣や、淡い赤色の班などの症状がみられます。これらの症状は出血を伴う水疱や、皮膚のえぐれである潰瘍などの症状へと変化することがあります。毛の長い犬では皮膚の色の変化に気が付きにくいために、膿やかさぶたが付着したようなふけのような症状として膿皮症がわかることもあります。
◆犬の膿皮症の原因
犬の膿皮症ではブドウ球菌の一種であるStaphylococcus pseudintermediusが原因となることが多いといわれています。そのほかには皮膚や被毛の汚れや、アトピー性皮膚炎などの疾患、遺伝子の異常などのいくつもの要因が発症に関係しており、細菌に対する皮膚のバリア機能が低下することで細菌感染が引き起こされ、病気がみられると考えることができます。
◆犬の膿皮症の診断と治療
・膿皮症の診断方法
膿皮症を診断するために動物病院では、皮膚や被毛の状態を確認する身体検査や、病気の皮膚から採取した組織を染色し、顕微鏡で観察することで病源体のあたりをつける皮膚掻爬試験や押捺標本の鏡検、原因となる細菌にどのような抗生物質が良く効くのかを調べるディスク法などの培養検査をおこないます。
・膿皮症の治療
膿皮症の治療では抗菌シャンプーの投与や、皮膚表面への軟膏の塗布による治療と、抗生物質の内服や注射などによる治療を疾患の状態に合わせておこないます。シャンプーを使った治療では皮膚表面のふけや細菌などの洗浄や、有効成分による抗菌作用により皮膚の状態を良くしていきます。この方法では数週間の間、何回かのシャンプーをする必要がありますが、軽度の膿皮症では症状がよく治まり、必要以上に抗生物質を使用しないことで犬にさらに大きな症状を引き起こす可能性がある薬剤耐性菌とよばれる薬の効かない細菌が発生しにくいといったメリットを持ちます。
膿皮症の症状が重い犬や、深在性膿皮症の犬では抗生物質の内服、注射をおこない治療をしていきます。この方法では犬の身体の内側から抗生物質により病原菌を攻撃するため、より大きな治療効果を期待することができます。抗生物質を内服させて治療する場合には、皮膚の症状が治まったあとにしばらく続けて薬を与える必要があります。自己判断で休薬をおこなうと再発の危険性だけではなく、耐性菌の発生してしまう可能性もあるため、かならず獣医師の指示の通りに治療をおこなっていくようにしてください。
また、以前膿皮症を患っていた犬で、治療をおこなったが再発してしまった場合には、より効果的な治療をおこなうために前回どのような薬与えていたかを獣医師に伝えるようにしてください。