【獣医師が解説】猫の慢性腎不全とは?症状・治療・自宅ケアまで丁寧に解説|厚木市のはやし犬猫病院
厚木市、海老名市、伊勢原市の皆様こんにちは。
厚木市本厚木の動物病院、はやし犬猫病院です。
「水をよく飲むようになった」
「最近、なんとなく元気がない気がする…」
そんな高齢猫ちゃんの変化、もしかしたら“腎臓の老化”が関係しているかもしれません。
猫に多い病気のひとつが、慢性腎不全(慢性腎臓病)。
年齢とともに腎機能が少しずつ低下し、進行すると命に関わることもある病気です。
でも早く気づき、きちんとケアすることで、猫ちゃんの生活の質を保ちながら長く一緒に過ごすことが可能です。
このページでは、猫の慢性腎不全について、症状・原因・治療法・ご家庭でできるサポート方法まで、やさしく解説します。
慢性腎不全とは?
腎臓は体の中で老廃物をろ過し、尿として排出する働きをしています。
しかし、この腎臓の働きが少しずつ低下していく病気が「慢性腎不全(慢性腎臓病/CKD)」です。
特に7歳以上の高齢猫に多く、進行はゆっくりですが治ることはありません。
ただし、進行を遅らせるケアや治療は十分可能です。
症状|こんなサインが見られたら要注意
慢性腎不全の初期には、目立った症状がないことも多いです。
以下のような変化が見られたら、早めにご相談ください。
✅お水をよく飲む/尿の量が増えた(多飲多尿)
✅体重が減ってきた
✅食欲が落ちてきた/ムラがある
✅毛づやが悪くなる、元気がない
✅嘔吐や下痢、口臭が強くなる
✅貧血(歯茎が白っぽい)、脱水
✅進行するとけいれんや意識障害など重篤な症状も
原因|なぜ腎臓が悪くなるの?
原因はさまざまですが、多くの場合は加齢に伴う腎臓の機能低下です。
- 加齢による腎臓の老化(特に12歳以上の猫に多い)
- 腎炎や腎結石、ポリシスティック腎疾患などの持病
- 猫伝染性腹膜炎(FIP)や中毒による腎障害の後遺症
- 高血圧や心疾患などによる腎機能の悪化
- 先天性疾患(特に若年性の腎不全)
猫の腎臓は、ある程度まで悪くなるまで症状が出にくい構造のため、定期的な健康診断が重要です。
診断方法|血液検査と尿検査でチェック
慢性腎不全の診断には、以下のような検査を行います。
- 血液検査(BUN、クレアチニン、SDMA、リンなど)
- 尿検査(尿比重、タンパク尿など)
- 超音波検査・レントゲン(腎臓の形の確認)
- 体重や水分摂取量の記録
特に最近では、SDMAというマーカーで早期発見が可能になってきました。
治療方法|進行を抑え、生活の質を保つためのサポート
完治は難しい病気ですが、治療や生活管理によって、穏やかな毎日を長く保つことができます。
① 食事療法(療法食)
腎臓に負担をかけないために、タンパク質やリン・ナトリウムを制限した療法食が基本です。
② 投薬治療
症状や進行度に応じて、以下のようなお薬を使用します。
- リン吸着剤(血中のリンを下げる)
- 血圧降下薬(高血圧の管理)
- 食欲増進剤・制吐剤
- 貧血対策の薬(造血ホルモン) など
③ 皮下点滴(補液療法)
脱水対策として、自宅で皮下点滴を行うことも可能です。
※当院ではご家庭での点滴指導も丁寧に行っています。
はやし犬猫病院のサポート体制
- 猫ちゃんの性格やご家族のライフスタイルに合わせた治療をご提案
- 自宅での点滴が初めての方にも、わかりやすい説明とサポート体制
- 早期発見のために、7歳以上の子には年1~2回の血液検査を推奨
「この子にとって一番穏やかな生活は?」を一緒に考え、治療だけでなく“暮らし全体のサポート”を心がけています。
ご家庭でできるケア・注意点
- お水をいつでも新鮮に用意する(数か所に設置)
- 食事を工夫して、少しでも療法食を食べられる工夫を
- 毎日の体重測定や食欲・飲水量のチェック
- トイレの量や回数、嘔吐の有無などを観察
- 定期的な通院・血液検査で状態の確認
Q&A|よくあるご質問
- 慢性腎不全は治りますか?
A. 完全に元に戻すことはできませんが、進行をゆるやかにして良い状態を保つことは可能です。 - 食事を食べてくれません…
A. 食欲増進剤や味のバリエーション、ウェットタイプや温めて香りを立てる方法などもご提案できます。 - 点滴は毎日必要ですか?
A. 子によって違います。状態に応じて頻度を調整し、ご家庭でできるようサポートいたします。
まとめ|腎臓と上手に付き合いながら、猫ちゃんとの時間を大切に
猫の慢性腎不全は、高齢になるほど多く見られる病気です。
けれど、早く気づいてケアを始めれば、“穏やかに暮らせる時間”をしっかり支えることができます。
「いつもと少し違うかも」と感じたときが、健康チェックのタイミング。
はやし犬猫病院では、小さな変化にも耳を傾けながら、猫ちゃんと飼い主さまの生活を一緒に支えていきます。
気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。