犬の膝蓋骨脱臼について|症状と治療法を獣医師が解説
厚木市、海老名市の皆様こんにちは。
厚木市本厚木のはやし犬猫病院です。
今回は犬の膝蓋骨脱臼(パテラ)について、解説いたします。
◆犬の膝が脱臼するパテラ(膝蓋骨脱臼)
パテラは犬でよくみられる病気であり、膝蓋骨脱臼ともよばれます。膝蓋骨とは後肢の太い骨である大腿骨と脛骨をつなぐ膝関節にある骨であり、人におけるひざのお皿にあたります。正常な膝蓋骨は滑車溝とよばれる大腿骨のくぼみに収まっていますが、パテラでは膝蓋骨が滑車溝から脱臼している状態です。
パテラには膝蓋骨が脱臼している向きにより内側脱臼と外側脱臼の2つの種類があります。内側脱臼は小型犬でよくみられる病気であり、外側脱臼は比較的大型犬で多いとされています。
パテラを持つ犬の膝の関節は正常な犬に比べて緩いため、膝の靭帯が切れてしまう病気である前十字靭帯断裂とよばれる大きな病気を続けて引き起こしてしまう可能性があります。症状が軽い場合でも放置せず、動物病院できちんとした治療を受けることが重要です。
・パテラにかかりやすい犬
パテラは若い犬で多くみられる病気であり、3歳以下で症状が表れることが多いとされています。また、小型犬は大型犬よりも病気のリスクが高いといわれています。
プードル、ポメラニアン、チワワ、ヨークシャーテリア、キャバリア、パグ、フレンチブルドックなどの小型犬はパテラの内側脱臼にかかりやすく、セントバーナードなどの大型犬は外側脱臼にかかりやすいといわれています。また、大型犬のなかでもゴールデンレトリバー、ラブラドールレトリバー、シベリアンハスキー、アラスカンマラミュートなどは内側脱臼になりやすいとされています。
肥満の犬では体重による肢の関節への負荷や、脂肪組織が分泌する炎症を引き起こすホルモンの作用などでパテラにかかりやすい可能性があるともいわれています。
◆犬のパテラの症状
パテラでは後肢の痛みや違和感による歩行の異常や、肢を地面につけたがらないなどの症状がみられます。歩行の異常としては、スキップするような歩行や、膝蓋骨が脱臼した際にみせる後肢を後ろに突き出すような動作、数歩異常な歩行をしたあと通常の歩行にもどるなどの症状がみられます。
多くの場合では片方の肢に症状が引き起こされますが、両方に異常がみられることもあります。両方の肢が脱臼しているときにはしゃがみながらする歩行や、内股のような後肢の様子が症状としてあらわれることがあります。
また、パテラには病気がどのぐらい進んでいるのかを表すグレードとよばれる指標があり、もっとも軽度のグレード1からもっとも重度のグレード4まで設定されています。グレード1は、普段脱臼はおきていないが激しい運動などの衝撃で脱臼がみられる状態、グレード2は脱臼がみられるが手によってもとに戻る状態、グレード3は脱臼を戻してもすぐに再び脱臼する状態、グレード4は脱臼が整復できない状態を表しています。グレード3と4のパテラでは外科的な手術による治療が必要になるといわれています。
◆犬のパテラの原因
犬のパテラは産まれたときに病気を持っている先天性の疾患であり、ポメラニアンやフラットコーデットレトリバーなどの犬種では遺伝子の異常が発症に関係していることがわかっています。
太腿の筋肉である大腿四頭筋、膝蓋骨、膝蓋骨が収まる滑車溝などの先天的なかたちの異常によりパテラは引き起こされますが、幼齢の犬で膝蓋骨が脱臼していることにより滑車溝に力が加わらず、膝蓋骨を収める十分な深さの溝の発達が遅れ、さらに症状が進んでしまうともいわれています。
パテラは先天的な原因だけではなく、交通事故やソファーなどの高所からの落下などの外力が原因となる外傷性の脱臼もみられることがあります。
◆犬のパテラの診断と治療
・パテラの診断方法
犬のパテラを診察するためには膝の触診をはじめとした整形外科的検査、骨の異常を探すためのX線検査などをおこないます。
・パテラの治療
パテラの治療では痛みや炎症を抑えることを目的としたステロイド剤やそのほかの抗炎症薬を使った保存的療法と、異常な骨のかたちや筋肉や腱の位置の矯正をおこない、膝蓋骨が脱臼しにくいようにする外科的手術を病気の状態に応じておこないます。