犬の外耳炎の症状、治療法について解説|はやし犬猫病院
厚木市、海老名市の皆様こんにちは。
厚木市本厚木のはやし犬猫病院です。
今回は犬の外耳炎について、解説いたします。
◆犬の外耳炎は早期の治療が重要
外耳炎は犬でよくみられる疾患であり、耳道に炎症がみられ強い痒みなどの不快な症状を引き起こします。外耳炎は症状が軽い場合、治療されないことがありますが、一度進行してしまうと治りにくい特徴を持ちます。
アトピー性皮膚炎や、細菌の増殖により発症した初期の外耳炎では、刺激により細胞がよく増え、皮膚が厚くなり耳道が狭く変化していきます。狭い耳道は湿度が高く病源体が増えやすくなり耳道の環境はさらに悪化し、耳垢を分泌するアポクリン腺や、皮膚の深い部分である真皮の障害を引き起こします。これらの障害は一度外耳炎を治療しても戻ることはなく、病気が再発しやすい状態が続くようになります。外耳炎がさらに進行すると、外耳よりも身体の奥にある中耳、内耳などの聴覚や平衡感覚に重要な組織に炎症が広がるようになり、難聴や神経症状などの大きな病気を引き起こすようになります。
難治性の外耳炎や、中耳炎、内耳炎などの重い疾患を予防するために、症状が軽い外耳炎であっても動物病院を受診し、早期の治療をおこなうことは非常に重要です。
・外耳炎がよくみられる犬種
外耳炎はどのような犬でもみられる疾患ですが、コッカースパニエルやホワイトテリアなどの犬種では耳の皮膚の異常を引き起こす別の疾患が原因となり、外耳炎を引き起こすといわれています。また、甲状腺機能低下症やクッシング症候群などの内分泌疾患を持つ犬で外耳炎は起こりやすいともされています。
◆犬の外耳炎の症状
外耳炎の犬では耳の痒みや、耳垢の増加、耳の臭いなどの症状がよくみられます。痒みによって犬は耳をよく掻くようになり、頭を振る動作がみられることもあります。また、皮膚を掻き壊してしまい耳の後ろや眼の横などの脱毛や、皮膚のかさぶた、紫や黒色への変色などの症状も同様にみられる場合があります。
細菌感染を起こしている犬の耳垢は乳白色や黄色をしており、マラセチアとよばれる真菌が増殖しているときには強い臭いがする黒褐色の耳垢がみられます。ミミヒゼンダニの外耳道への寄生によるミミヒゼンダニ症では、黒い耳垢と共に非常に強い痒みが引き起こされます。
外耳炎の中には耳周りの症状だけではなく、全身症状がみられるものもあります。アトピー性皮膚炎が関係する外耳炎では、全身の痒みや脱毛、皮膚の赤み、変色などの症状がみられ、食物アレルギーが関係している場合には、口やお尻の周りに症状がみられます。また、マラセチアによる外耳炎では皮膚や被毛がべとべと変化し強い臭いを放つマラセチア性皮膚炎がみられることもあります。
◆犬の外耳炎の原因
犬の外耳炎はひとつの原因ではなく、複数の原因が発症に関係しているといわれており、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーなどの素因により悪化した耳道の環境で、病原体が増殖することで症状がみられます。外耳炎を引き起こす病源体としてはブドウ球菌やマラセチア、ミミヒゼンダニなどが知られています。ブドウ球菌やマラセチアは健康な犬の皮膚にも存在する細菌や真菌ですが、ミミヒゼンダニは外耳道に寄生する小さなダニであり、犬から犬へと感染しミミヒゼンダニ症を伝搬します。
◆犬の外耳炎の診断と治療
・外耳炎の診断方法
動物病院では外耳炎を診断するために、耳垢を採取し、病源体を観察する塗抹検査、耳道の中を直接覗くことで、炎症の程度や鼓膜の状態を観察する耳鏡検査などをおこないます。外耳炎では皮膚の状態を悪化させているアレルギーなどの基礎疾患を見つけ出すことが重要なため、血液検査などのその他の検査も同時におこなっていきます。
・外耳炎の治療法
外耳炎の治療では耳道の感染に対する治療と、耳道の環境を悪化させている基礎疾患の治療をおこないます。前者では感染源となっている耳垢の洗浄、除去、細菌や真菌などの病原体に対する抗生物質の投与をおこない、後者では除去食を使用した食物アレルギーの治療や、抗ヒスタミン剤などのアトピー性皮膚炎に対する治療などをおこないます。
外耳炎は耳掃除をおこない、耳道環境を清潔に維持することで発症を予防することができますが、頻繁の耳掃除や、過剰な耳道内への刺激によって逆に耳垢の産生を増加させてしまうことがあるといわれています。一度、かかりつけの獣医師に相談し、正しい耳掃除の方法を教えてもらうようにしてください。