犬のてんかん発作|原因と症状、治療法について解説
厚木市、海老名市の皆様こんにちは。
厚木市本厚木のはやし犬猫病院です。
今回は犬のてんかんについて、解説いたします。
◆犬のてんかん発作の種類と重積症状
てんかんは犬でよくみられる疾患であり、てんかん発作とよばれる痙攣などの大きな症状を引き起こします。てんかんは脳の神経細胞が異常に活動することで症状がみられますが、脳のどの部分から発作が起きているのかにより部分発作、全般発作の2つの種類に分類することができます。部分発作は脳の一部分に異常がみられ、身体の一部分の動作や特定の感覚などの限られた機能に症状がみられる発作であり、犬の意識が正常なままてんかん発作がみられる単純部分発作と、意識を失ってしまう複雑部分発作が含まれます。一方、全般発作は脳の全体が異常な活動をおこす、もしくは部分発作が広がることで脳の大きな範囲に異常な活動がみられる状態であり、身体の全体に発作症状が引き起こされます。
てんかんを持つ犬では重積とよばれる複数の発作が同意に起きることで、10分以上の長い時間にわたって発作が続くがあります。てんかんの重積は脳の神経細胞が死んでしまうことによる障害や、心臓や肺が十分に働かないことによる命の危険をおこしている状態です。症状がみられるときには、いち早く動物病院を受診して治療を受ける必要があります。また、重積が起きる前には群発発作とよばれる1日に2回以上の発作がみられている可能性があるため、注意を持って観察するようにして下さい。
・てんかんがよくみられる犬種
てんかんは6歳までの犬でよくみられる疾患であり、ボーダーコリー、オーストラリアンシェーパード、コリー、ラブラドールレトリバーなどの犬種で好発するといわれています。ただし、脳や血管の障害が原因となるてんかんでは中高齢の犬において多くみられるともいわれています。
◆犬のてんかんの症状
てんかんでは部分発作と全般発作で症状が異なる場合があります。部分発作では身体をこわばらせる、がくがくと痙攣する、視覚や聴覚などの感覚の異常がみられるなどの症状や、口をぱくぱくと咀嚼させるチューインガム発作、顔面の筋肉の痙攣、よだれを垂らす、瞳孔が開くなどの症状がみられます。
一方、全般発作では全身の筋肉ががくがくと硬直する間代発作がおおよそ1-3分の間続いたあと、食欲が増す、喉が渇く、落ち着きを失う、ずっと眠るなどの発作後の症状がみられます。てんかんの発作では犬に異常な症状がみられている間、飼い主が声をかけ、注意を引こうとしても行動が変わらないという特徴がみられることがあります。
また、てんかんの発作には周期性があり、症状がみられない発作間欠期、大きな発作の前の異常である前駆期、てんかん発作そのものである発作期、発作の後にみられる発作後期のサイクルで症状がみられます。
◆犬のてんかんの原因
犬のてんかんの原因には特発性、症候性、潜在性の3つがあります。特発性のてんかんは犬ももっともよくみられ、検査をしても原因がわからないものを指します。特発性のてんかんは遺伝子の異常によって引き起こされている可能性があるともいわれています。
症候性のてんかんは特発性のてんかんの次によくみられるものであり、脳の構造や脳血管の異常、腫瘍、感染症などの原因によりてんかんが引き起こされています。潜在性のてんかんは症候性のてんかんと思われるが検査で異常がみつからないものを指します。症候性、潜在性のてんかんは後天的に引き起こされる病気を含みますが、その原因として事故などの外傷によるものが大きな割合を占めているともされています。
◆犬のてんかんの診断
・犬のてんかんの診断
犬のてんかんを診断するために動物病院では、年齢や既往歴を調べる問診や、てんかん以外の異常をみつける血液検査、身体検査、てんかんによる異常な脳波の検査、MRIなどを使用した画像検査などをおこないます。
てんかんかもしれない犬を動物病院に受診させるときには、てんかん発作を録画した映像を持参することで、獣医師はより正確な治療をおこなうことができます。
◆犬のてんかんの治療
<てんかん発作を治療する意義>
〇脳が壊れるのを防ぐため
発作によって脳の神経細胞がダメージを受けてしまいます。そのため発作を繰り返し過ぎるとボケ(認知症)が早く出てしまうことがあります。
〇てんかんの重篤化・難治化を防ぐため
てんかんは治療しないままだと発作の頻度や強さが増していきます。そうなると治療もしにくくなります。
〇患者およびオーナーさんのQOL(生活の質)の維持・向上
・患者の肉体的・精神的ストレスの軽減
・オーナーさんの精神的・経済的負担の軽減
<いつ治療を始めるか?>
はやし犬・猫病院では以下のような場合に治療を始めることをお勧めしています
1.6か月以内に2回以上のてんかん発作がある場合
2.てんかん発作重積あるいは群発発作の場合
3.発作後の徴候が24時間以上続く場合
4.構造的てんかんが明らかな場合
<てんかん治療の目標>
人のてんかんの治療目標は「発作ゼロ」とされます。もちろん犬の場合もそれが理想的ですが、獣医神経科の専門医頻度でコントロールすること」とされています。
てんかんの治療ではてんかん発作の回数を減らすことを目的とした抗てんかん薬の投与をおこないます。抗てんかん薬は血液中に含まれる濃度を一定に保つことで、副作用を最小限にし、より効果的な治療を行える薬剤です。最近はカンナビジオール(CBD)という成分を含むサプリメントがてんかん発作の軽減に役立つことが報告されており当院でも効果が認められたわんちゃんがいます。また中佐脂肪酸を豊富に含まれたてんかん用のドッグフードも発売されています。治療の際は獣医師に指示された薬の投与間隔をきちんと守り、発作が少なくなったからといって自己判断で休薬することは絶対にやめてください。むやみに治療を中断してしまうと症状が悪化したり、以前よりも薬の効きにくくなってしまいます。