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病院ブログ|厚木市にある土日診療・往診の動物病院 - はやし犬猫病院

猫の歯肉炎について|症状と治療法について獣医師が解説

厚木市、海老名市の皆様こんにちは。

厚木市本厚木のはやし犬猫病院です。

今回は猫の歯肉炎について、解説いたします。

 

◆猫の歯肉炎は歯肉や喉に症状を引き起こす

猫は歯肉炎が多くみられる動物です。歯肉炎では口内炎や喉の炎症などの生活の質を脅かす症状がみられます。猫は人と異なり砂糖や口腔細菌による虫歯が少なく、喧嘩による犬歯折れや、慢性歯肉口内炎とよばれる疾患、破歯細胞性吸収病巣とよばれる歯肉の障害がよくみられます。慢性歯肉口内炎は歯肉や口腔粘膜の炎症、喉にあたる咽頭や食道の炎症を引き起こす疾患であり、破歯細胞性吸収病巣は歯肉の炎症がきっかけになり、歯を吸収する役割を持つ細胞が異常な働きにより歯を壊してしまう状態です。

 

・歯肉炎がよくみられる猫

猫の歯肉炎を引き起こす慢性歯肉口内炎では室外に自由に出入りできる猫や、多頭飼育をされている猫で病気が多くみられたといわれています。室外環境には野良猫に蔓延するいくつものウイルス性疾患や、細菌感染が存在しており、口腔環境を悪化させる可能性があります。また、多頭飼育では食事やトイレなどにおいてストレスがかかりやすいため、病気の発症になんらかの影響があるのかもしれません。

 

 

◆猫の歯肉炎の症状

猫の歯肉炎では歯肉が赤く腫れる、潰瘍とよばれる粘膜のえぐれができる、歯肉が弱まることで歯の付け根が露出する、歯がぐらぐらと動く、歯が抜ける、口を開けることを嫌がる、よだれを垂らす、口臭が強くなるなどの炎症に関係する症状がみられます。歯肉の炎症では歯肉が異常に増えできもののようにみえることもあります。また、潰瘍は歯肉だけにできるわけではなく、舌や喉にみられる場合もあります。

 

歯肉炎は口内の強い痛みや不快感の原因となり、元気や食欲の低下を引き起こすこともあります。歯肉炎に続いてみられる咽頭炎や食道炎では食べ物や水を飲み込むことができない嚥下困難とよばれる症状がみられる場合もあります。症状が長く続くと猫の体重が減少するかもしれません。

 

猫の歯肉炎は口や喉にだけに症状がみられるわけではありません。歯肉の炎症が歯の根っこまで広がった根尖膿瘍では、眼のくぼみや下顎の骨に膿が溜まることがあります。また、歯肉炎は血液に細菌が感染する敗血症や、腎不全などの大きな病気に関係している可能性があります。

 

 

◆猫の歯肉炎の原因

猫の歯肉炎である慢性歯肉口内炎の原因はいまだにわかってはいませんが、猫の口腔内に潰瘍などの症状を引き起こす猫カリシウイルスや、猫エイズの原因となり免疫機能を低下させる猫免疫不全ウイルス、猫ヘルペスウイルス、猫白血病ウイルスなどの猫で多くみられるウイルス性疾患は猫の口内炎の発生になんらかの関わりがあると考えられています。

 

◆猫の歯肉炎の診断と治療

・猫の歯肉炎の診断

猫の歯肉炎を診断するためには既往歴を調べる問診、歯の状態を確認する身体検査、エックス線などの画像検査、血液・生化学的検査などをおこないます。

 

・猫の歯肉炎の治療

猫の歯肉炎の治療では内科的治療と、外科的手術を病気の状態に応じておこないます。内科的治療では抗生物質や抗炎症薬などの投与により細菌感染と炎症を抑えますが、猫の歯肉炎は内科的な治療に反応しにくいといわれています。

 

外科的手術では抜歯をおこないます。抜歯には歯の一部分を抜く部分抜歯とほとんどの歯を抜いてしまう全抜歯があります。症状の重さによりどちらの抜歯をおこなうかを選択しますが、はじめの治療で部分抜歯をおこない症状が収まらなかったときに全抜歯をおこなうこともあります。慢性歯肉口内炎では抜歯をおこなったあとに、継続して炎症を抑える薬を飲み続ける必要がある猫もいます。

 

猫の歯肉炎を予防するためには家庭での定期的な歯磨きによるプラークの除去が効果的です。歯磨きを嫌がる猫に対しては動物病院での年に1回程度のスケーリングによって予防をおこなうことができます。ただしスケーリングは麻酔下での歯石やプラークの除去であるため、獣医師と猫の体調について相談した上でおこなう必要があります。歯科予防用のおやつなどを与えることは、歯磨きやスケーリングよりも効果はありませんが、歯磨きを嫌がる猫にとっての選択肢のひとつになります。